初孫の小さな背中と、東京の空

誰かを愛おしいと思う気持ちに、もっともらしい理由なんて、
本当は必要ないのかもしれません。
「ただ、そこにいてくれるだけでいい」
誰かのものさしや、損得勘定から一番遠い場所にある、
無条件のぬくもりに、私たちは日々どれほど救われているでしょうか。
血のつながりという枠を少しだけ超えて、
お互いの存在を全肯定した、
そんな「サードファミリー」の視点が、
ひとりの小さな命と出逢った時のことです。
____ここからは、私と、私の大切な、
小さな相棒の物語。
「なんでそんな、おうちゃん、、、あんたに懐いてんの!?」
たまに実家に帰る妹(私)の膝の上で、すっかりくつろいでいるおうちゃんを見て、
保育士である実の姉が驚いて、不思議そうに尋ねます。
この家の初孫、おうちゃん。
家族みんなが待ちに待った待望の初孫として、
彼はこの世にやってきました。
小さい時からとにかく可愛くてしょうがない存在。
両親も、家族も、みんなに可愛がられて育ちました。
東京の空の下、おうちゃんももう高校3年生。
数年前、東京で暮らす兄の奥さんであるあっちゃんが、
打ち明けるようにしてこう言いました。
「私、サードファミリーがいなかったら本当にヤバかったと思う…」
おうちゃんは、
いわゆる『アウトオブボックス(枠の外)の人』でした。
小さい頃から、場所見知りや人見知りが少しあり、
言葉が遅く、こだわりが強かったり、
感覚過敏な一面もあったのです。
年に数回、里帰りするたびに、実家の家族は、
「今年こそしゃべれるようになったかな?」
「会話できるかな?」
という期待を持っていました。
だからこそ、なかなか言葉が出ないおうちゃんを見ては、
心配する思いが募っていく。
「愛ゆえの期待」は、いつしか「周りと比べた心配」という名の、
見えない重圧へと姿を変えていたのです。
嫁という立場でその無言のプレッシャーを、
あっちゃんは肌でひしひしと感じていました。
ある時、おうちゃんが両親と散歩に出かけた隙に、
実家の母と保育士目線の姉が、台所でコソコソと会議を始めました。
「ねぇ、どう思う??…やっぱり。。。」
「いやぁー、言葉が出ないね。」
そんな会話を耳にしたサードファミリー(妹)は、見かねて言い放ちました。
「あのさぁ。そういうの思ってんなら、目の前で言えよ。
おらんとこで言うて何になるんか!!
そんな目で見とるから、あんたらには懐かんのやろがい。」
おうちゃんの成長を、周りと比べて「できないこと」にフォーカスする。
「正しさ」というものさしを当てて心配し、いないところで深刻そうに話し合う。
これが家族として、どうしても嫌でした。
それは心配ではない。心配するふりをして、
「自分の」ものさしでおうちゃんを見て、他者と比べているのと同じことだと。
サードファミリーは、連休をつくっては東京へ遊びに行き、
写真を撮って帰っては実家の両親に見せ、
東京で離れて暮らす兄家族にはアルバムにしてプレゼントしました。
想い出のなかにはいつも一緒にいるのではないかというくらい、
たくさんの時間を共に過ごしたのです。
言葉だけではない、コミュニケーション。
一緒に笑い、一緒に泥だらけになり、
想い出の写真におさめる。
サードファミリーが放つ、「ただそこにいるだけで最高やん。」
という空気に巻き込まれるようにして、
家族みんなで、おうちゃんのありのままを受け入れていきました。
その後、おうちゃんに弟が産まれ、妹が産まれました。
サードファミリーはいつも、すぐ側で子どもたちの成長を見守り続けてきたのです。
おうちゃんも少しずつできることが増え、
周りの人たちに愛されながらスクスク大きくなりました。
人より少しゆっくりだったかもしれませんが、
ジャングルジムのてっぺんまで登れるようになり、
一人で登下校できるようになり、
今は将来に向けて一生懸命、学校に通っています。
あっちゃんが、当時の思い悩んでいた頃のことを打ち明けてくれたのは、
子どもたちがだいぶ大きくなってからのことでした。
小さなおうちゃんを一人で抱え、地元から遠く離れた東京の空の下、
初孫への期待をいっぱいに背負って、
おうちゃんを育ててくれたあっちゃん。
あっちゃんが気づかせてくれたおかげで、
枠の外にいる誰かも、枠の外にいる自分自身も、
ありのままを全肯定できる。
そんな気持ちになれました。
時が経つのは、本当に早いものです。
サードファミリーから可愛い子どもたちに贈ったランドセルは、
それぞれの個性を映したような、
こだわりのチャコールブラウン、ダークグリーン、ダークワイン。
3人色違いです。
今年の春、ついにみんなそのランドセルを卒業しました。
おうちゃんは高校3年生になった今でも毎晩、
あの頃のアルバムたちを愛おしそうに見つめてくれています。
「誰が一番かわいい?」
と聞くと、彼は必ず、小さい頃の自分を指さして笑うのでした。
東京の兄家族は、お互い相手に歩み寄り、
凸凹な部分を理解し合いながら、共に生きています。
『普通』では味わえない、思いやりと、調和の心が育つ、
本当に素敵な家庭になっています。

東京の甥っ子姪っ子三人組with思い出のランドセル

公園には思い出がいっぱい

兄と変わらないくらい大きくなったおうちゃん

思い出のランドセルは大事にリメイクされるそうです