長女の意地と、不器用な父のメッセージ

一番近くにいるはずなのに、なぜか素直になれない。
そんな不器用な愛おしさが、家族の間にはあちこちに転がっています。
特に「長女」って生き物、おもしろいですよね。
親の期待や家庭の灯りを背負おうと、
ついひとりで頑張りすぎてしまうもの。
私は4人兄妹の末っ子(兄、姉、兄、私)なのですが、
実の姉を見ていても、長女である友人を見ていても、
親との関わり方がとにかくおもしろい。
その親もなんだかおもしろいのです。
実の親子だからこそ、近すぎてうまく測れない心の距離。
そこに血の繋がらない「第二の娘・伝書鳩」がそっと入り込んでみたら__。
冷戦状態だった親子に、なんとも可笑しくて、
温かい適度の風が吹き抜けました。
中でも、特に面白いのが「この親子」。
私がサードファミリー(第三の家族)として、
長年介入し続けてきた、ある家族の物語です。
「お父さん、ただいまー!」
「おーう。よくきたな。いらっしゃい。」
景子ちゃんのお父さんは、第二の娘である私をいつもあたたかく迎え入れてくれます。
「ただいまぁ…」
「・・・・・。ぉぅ。」
後ろから、実の娘である景子ちゃんが帰ってくると、
お父さんは急にぶっきらぼうになります。
もしくは、まさかの無言(笑)
長女の景子ちゃんと、お父さんは、
これは意地の張り合いなのかなんなのか、
お互い「適度なコミュニケーション」が取れないのです。(笑)
自宅の隣には少林寺拳法の自宅道場があり、お父さんは元・数学の先生。
景子ちゃんも少林寺拳法全国3位の実績を持ち、
当時は教員を目指す自慢の娘…でした。
その頃までは、夜遅くまで熱く教育論を語り合い、
仲がいい?親子だったそう。
しかし、社会人1年目。教育現場のリアルを実際に目で見た時、
景子ちゃんはこう思うのです。
「私はもっとお母さんたち(女性)を元気にする仕事をしてみたい。」
そして景子ちゃんは自分探しの旅へ出るように大阪へと向かい、
女性を元気にするエステティシャンになるのです。
『世のお母さんを元気にしたい』
景子ちゃんの切なる願いは、自分自身の家族との実体験から生まれた感情でした。
景子ちゃんが高校3年生の時。
ある日突然、お母さんが目の前で「バタッ」と倒れたのです。
母親が倒れると、こんなにも家の中が暗くなってしまうのか__。
当時高校生だった景子ちゃんは、
大きな不安に襲われます。
家の中の通帳がどこにあるのかも、
保険に何が入っているのかも、子どもには何もわからない。
学校の休み時間になるたび、大急ぎでチャリを漕いで家に帰り、
洗濯物を干してはまた学校に走る。
まだ幼い弟もいる中で、当時どうやって家庭を回していたのか、
今では思い出せないほど目まぐるしく過酷な日々を送ったそうです。
景子ちゃんのお母さんは、本来とてもユニークで面白い人。
倒れる前までは、PTAで大活躍したり、お花のお教室を開いたり…
とにかくパワフルで活発に動かれている方でした。
「あのねぇ、私がこうなったから、お父さん、私に優しくなったのよ。(笑)」
身体に麻痺が残るお母さんは、そう言って笑いながら教えてくれました。
厳しかったお父さんは、お母さんが倒れたことをきっかけにすっかり優しくなったのだそう。
(その厳しさの矛先が、なぜか景子ちゃんに向かうことになってしまったのですが…)
ある日のこと。
暗い夜道で、お母さんの両手を優しく引いて歩く景子ちゃんの姿がありました。
「お母さん、本当によか娘ね。」と後ろからそう声をかけると、
お母さんはピタっと立ち止まり、ニヤリ。
「誰が産んだと思う?(ドヤ顔)」
そう言って誇らしげに笑うのでした。
この家に遊びにいった時、私は「リアル伝書鳩」になります。
一階でお父さんの言い分をじっくり聞き、
二階にいる娘(景子ちゃん)に伝える役目です。
「正月の掃除をもっと手伝え。」
「家のことをもっとしろ。」
「来週は大会でいないからお母さんのことせやんぞ。(お世話しなきゃだぞ)」
そんな小言のような日常のメッセージの中に、
実はしっかりと、娘を深く想うお父さんの本音が隠れていました。
「俺はな、もう景子の孫が見たいと思っとる。
アイツと一緒に居れるのはダイチぐらいしかおらんぞ。
頼んどくな。」
娘の幸せを心から願う父親の切実なメッセージも、
こうして伝書鳩づたいに届けられるのでした。
不器用なお父さんのメッセージには、
こんなこともありました。
「お、来てたか。そうそう。今月はアイツの誕生日やろが。
これ渡しておくから、これでなんかウマイもんでも食いに行ってくれ。
お前も行かないかんぞ!!」
そう言って、お財布から8000円を取り出すと、
わざわざ茶封筒に入れて手渡してきたのです。
「お、わかった!ありがとうね。景子ちゃんに渡しておくね。ごちそうさま!!」
口ではそう答えながらも、心の声は、こうツッコミます。
(二階に行ったら実の娘おるけどな…笑)
直接言えばいいことも、どうしても言えない。
そんな愛すべき不器用な父親のメッセージと茶封筒を抱えて、
今日も伝書鳩は親子の間に入り、ちょうどいい「適温のメッセージ」をそっと運ぶのでした。
そんな景子ちゃん。
実は、大好きな親友と同じ日に、ついに入籍を果たしました。
それは不思議なことに、伝書鳩である私が、
自身のビジョンボード(THE VIOLET)という人生の羅針盤に辿り着いた日と、
まったく同じ日のことでした。
実は、伝書鳩から「旦那さんへのメッセージ」を添えたご当地婚姻届をプレゼントしたのは、
なんと2年も前のこと。
大切に温められていたその婚姻届がやっと提出され、
景子ちゃんは新しい一歩を踏み出し、自分の家庭を持ったのです。
そんな彼女から、ある日こんなお願いをされました。
「披露宴パーティであの話をして!」
リクエストされたのは、なんと、
『飼い犬マリーの糞を、娘の車の上に乗せるとんでもない父親の話(笑)』
この家族は、世間の『普通』や綺麗事ではちょっと考えられないような事件が、
日常茶飯事に勃発する、本当におもしろい家。
でもその風変わりな事件のすべてこそが、
言葉にできない不器用な愛情ゆえのメッセージなのです。
これから先もきっと、この愛すべきいびつでおもしろい意地の張り合いは、
ずっとずっと続いていくのでしょう。
__さて。
「長女って生き物」の奥深さは、これだけでは終わりません。
物語は、Episode05『景子ちゃんの親友の物語』へと続きます。

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