長年待った婚姻届と、新しい幸せのカタチ

年の差、将来への不安、親心ゆえの心配。
誰かを大切に想うからこそ、
おとずれた現実を前にして、一歩が踏み出せなくなることがあります。
誰もが「これは正解」と言い切れない未来を前に、
立ち止まっている大切な人たち。
そんな時、境界線をひょいと飛び越えて、
「愛あるおせっかい」を焼いてくれるサードファミリーが側にいたら、
重苦しい空気も、おっかしゅうてついつい笑ってしまう、
とっておきのネタやイベントに昇華してしまうでしょう。
未来のいびつさごと丸ごと抱きしめた、
2年越しの物語が始まります。
「世の中みてんかぁー。ちょっと、、、わっかとのがーんおっとこれ。」
(世の中見てみなさい。こんなにも若い人間がたくさんいるというのに。)
父親の本音は方言丸出しでダダ漏れ。
誤魔化しようのない想いは、ポロポロと口から溢れ出していた。
それでも、少しの寂しさと大きな愛を抱えながら、
オヤジは娘の婚姻届にサインするのでした。
これは、Episode04の長女シリーズのバトンを受け取る、
景子ちゃんの親友「ナミさん」の物語。
ナミさんとの出逢いは、もう20年以上前のこと、
当時中学3年生だった私が、練習生として通っていた高校の3年生にナミさんがいました。
全国を狙う強豪高校バレー部のインターハイチームを率いる、
絶対的なキャプテン。
それがナミさんでした。
私はサウスポーでライトの選手。
対するナミさんはレフトエース、
まさに「黄金の右手」を持つ、誰もが信頼を寄せる選手でした。
高校を卒業してからも、OGとしてよく現役の練習に顔を出してくれた先輩。
ナミさんたち偉大な先輩方のおかげで、
私たちは全国大会に出場することができたのです。
その後、私はナミさんを追うようにして同じ大学に進学したため、
大学でもそのまま先輩と後輩に。
(景子ちゃんとも大学で出逢います。)
大学時代の1年間だけ、レフトとライトとして、
同じコートで一緒にバレーボールをすることができたのです。
それは今思い出しても、最高にエキサイティングな時間でした。
大学生の頃は、先輩たちに誘ってもらった会場にナミさんがいると分かると、
あえてお財布を家に置いて遊びに行っていました。
「今日もごちそうさまです!!(笑)」
なんて言いながら。
そして大人になった今でも、ずっと変わらずに可愛がってもらっている、
大好きな先輩です。
「私ね…ナミが3人一緒に介護になると思うと、本当に心配なの。
そして、一緒のお墓にあの人も入るってこともあるんでしょ?」
それは何年も前、ナミさんのお母さんが、娘の後輩である私にポツリと漏らした言葉。
年の離れたパートナーを持つ、大切な娘。
その娘の未来を心から心配する、
母親の切なるメッセージでした。
「まぁね…」
心配性の母の心配事を聞きながら、
その想いを「うん、うん」と、
まずは一旦丸ごと受け止めます。
それでも、後輩はナミさんにこう伝え続けるのでした。
「ま、でもね。
大丈夫よ。ナミさん。
おかんあんなに心配してるけど、長女のことになると親ってどこも、あんな感じやん?
ダーリン、散骨希望してるし(笑)、
めんどくさがりのナミさんの隣に居れるのは、あのダーリンしかおらんで。」
「お前の茶碗と箸も、ワイらの家に置いとってええからな。」
そう言ってくれる優しいダーリンのそばに、
後輩は何年もお邪魔して、
たくさん可愛がってもらっていたのです。(笑)
お二人の空気感を特等席で見てきたからこそ、確信を持って言えました。
「もう何年も一緒におるんやけ、
籍いれてまえ!心配事なんか関係ない。
娘が幸せやったら、親はそれが一番幸せなんやで。」
誰かさんの関西弁を真似て、そんなふうに伝える日々が続きました。
長女のナミさんもまた、心配性の母に何処か似ている部分もあり、
基本は「流れに身を任せるめんどくさがりタイプ」。
「籍いれたからって、一体何が変わるの?」
ずーっとこんな調子でした。
でも、ナミさんはナミさんなりに、
お母さんの心配を肌でちゃんと感じていたのです。
ただ、一歩を踏み出すためのきっかけも、
もっともらしい理由も、
おそらく見当たらなかっただけなのでしょう。
そんな姐さん方と、未来の旦那様たちに全力で可愛がられる生意気な後輩は、
ここで立ち上がります。
__私にしかできない、
「愛あるおせっかい」の手を打つために。
景子ちゃんとナミさん、それぞれの旦那さんたちと、後輩の私。
5人で焼き鳥を食べに行った時のことです。
ここで粋な後輩は、あるとっておきの企画を打ち出しました。
『じゃあ、私からここでプレゼントね!』
「え!?なになに!??」
突然のサプライズに、4人は驚いて目を丸くしています。
『ではまず…』
そう言って、ピンクのクリアファイルにいれた婚姻届を取り出し、
景子ちゃんへ。
可愛い後輩から旦那様への、愛の詰まったメッセージを声に出して読み上げました。
『続きまして…』
今度は色違いの、黄色いクリアファイルにいれた婚姻届を取り出し、
ナミさんへ。
同じように、旦那様への熱いメッセージを読み上げます。
驚きながらも二組はものすごく喜んでくれました。
大爆笑しながら、そのプレゼントと、
生意気な後輩らしい、ユニークで愛あるおせっかいの言葉たちを、
何度も何度も眺めるのでした。
それから2年の月日が流れました。
あの時のご当地婚姻届は、寝室に大切に飾られたり、
時にはケンカのたびに引き出しの奥深くに追いやられたりしながら(笑)、
ついにその運命の時を迎えます。
2026年3月5日。
なんと、2組同時に婚姻届が提出されたのです。
めんどくさがりなナミさんの心に火をつけたのは、
親友の景子ちゃんが現実的に動き出したことでした。
先輩の性格を1から10まで知り尽くす後輩は、
ここぞとばかりに最後の追い打ちをかけます。
「このタイミング逃したら、一生ないと思った方がええで。
もうこれは『合同イベント』に昇華するんよ。どさくさに紛れて籍入れてまえ!
おかんももう、おめでとうってなるやろし。
ダーリンにとっても終活の一部やで。絶対そうしたった方がええて!」
母の心配を誰よりもひしひしと感じていた娘。
けれど、長年サードファミリー(第三の家族)として、
私たちがそばに居続けたからでしょうか。
その頃には、かつて四角四面でどこか重苦しかった家庭に、
新しく心地よい風が吹き抜けていました。
ナミさんからの「入籍するよ」という申し出は、
お母さんにあっさりと受け入れられます。
それどころか、あまりにも現実的なお母さんからは、
「早速なんだけど、すみませんねぇ。こんな時に(笑)。」
と、結婚の報告を受けた直後から、
ものすごく具体的な相続の話を進め出したと言う、
なんともおかんらしいエピソードが飛び出したのです。
ナミさんから届いた喜びと笑い混じりのその報告を聞いて、
心の底から安心しました。
こうして、ナミさんもまた、
確かな足取りで新たな一歩を踏み出したのです。
2年もの間、大切に温められていたご当地婚姻届。
それは、「3人介護が同時に来るかもしれない未来」を、
愛おしい愛犬(+1匹)とともに、
丸ごと抱きしめた、新しい家族のカタチ。
不器用な親のメッセージを受け止め、
全員が満面の笑顔で寄り添い合う。
そんな温かく、最高に賑やかな新しい家族の物語が、
今、ここからスタートしました。

この家族にはいつもサードファミリーが側にいます

寝室に2年間飾られていた書類をやっと提出

おめでとう姐さん方